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前田浩一

 

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前田浩一/Koichi Maeda

 

小谷村大網に初めて足を踏み入れたのは、2000年5月。残雪がびっしり残る峠道を歩いて、でした。 大網を拠点に活動する世界的冒険教育機関「OBJ」の指導者育成プログラムに参加し、プログラム修了後は大網に住みながらスタッフとして仕事を始めました。 自然、冒険、人、成長などに関わるOBJ(Outward Bound Japan)での仕事はとても魅力的でした。 仲間との共同生活はとても楽しく、また、Outward Boundという言葉通り、世界がどんどん拡がっていくような感覚も心地よくて、OBJの仕事を続けたい一心で大網で暮らしていました。 2006年には常勤となり、2009年に結婚。 2012年に古民家を購入した頃は、大網に住みながらずっとOBJで仕事を続けるつもりでした。

大網での暮らしが長くなってくるにつれて、大網の人と関わることも少しずつ増えていきました。 その時感じた大網の人の優しさや温かさ。 受け入れられている感覚。 大網のことがどんどん好きになり、もっと関わりたい、もっと役に立ちたい、もっと一緒に時間を過ごしたいと思うようになっていました。 OBJでの仕事は変わらず魅力的でしたが、いつの間にか、大網で暮らしたいからOBJで仕事をしている、そんな逆転現象が起こっていました。

そんな時、あやかとなべが大網に引っ越してきました。 大網での暮らし、受け継ぐことと伝えること、生業を作ること、おいちゃんおばちゃんたちのこと、など。 何日も何日も4人で話し合いました。 そうして、「くらして」が始まりました。

4人でできることはたくさんあります。 と同時に、4人でできることには限りがあります。 守りたいことの中には、頑張っても失われてしまうことがあるかもしれません。 私たちと仲間の力で何をどれくらい残せるのか。 OBJで培われた、チャレンジする気持ちが試される毎日です。 おいちゃんおばちゃんたちに、大網はこの先100年200年大丈夫だ、と思ってもらえるその日まで。

私は大網の暮らしを残したい。 そして大網の暮らしを伝えていきたい。 山や田畑、伝統、信仰、毎日の暮らし。 お互いを思いやり、困ったときはお互い様で助け合い、足りないところは補いあい、懐深く受け入れる。 大網に限らない、そういった日本の良さ、日本人の素晴らしさを日本に、そして世界に伝えたい。 それが私の、私たちくらしての使命だと、今は心からそう思っています。

大網で暮らしていると、祖父母が住む和歌山県古座川町での子どもの頃のことを時折思い出します。 その引き金になるのは早起きして玄関を開けた時の空気感、大網のおいちゃんおばちゃんたちとの何でもない会話、水が流れる音、木の匂いなど。 私が今大網に住んでいるのは、あの頃の経験も少なからず影響しているなぁとつくづく思います。 大阪人の心は失わず、大網人として、これからもここで暮らしていきます。

 

 

 

 

◎くらしてのメンバー
前田浩一前田聡子北村健一北村綾香おとあ